第7章 LOVE LOVE LOVE(政宗)
愛は、昼間、努めて明るくしていた。
政宗のいない広間に呼ばれるのは、とても辛かったが、
みんなに心配をかけるわけにはいかない。
『政宗からは連絡はあったか?』
信長は毎日誰かに確認する。
織田の斥候からの情報はいつも愛にも伝えてくれた。
特に分が悪いわけでもなく、悪い知らせがあるわけでもない。
それでも愛は、明日どうなるかわからないこの時代で、
安心することはできなかった。
(この情報は、最新じゃないんだもんね…)
もしかしたら、今まさに政宗がピンチかもしれない…
そう思うと胸が張り裂けそうだ。
そんな気持ちを紛らわすように、毎日広間に明るい花を活け、
軍議のお茶を淹れ、菓子を出す。
夕餉の時にも政宗の話は一切しなかった。
むしろ、誰もその話をしなかったのは、既に気を遣わせていたのかもしれない。
秀吉は、手際よくお茶をたて、持ってきた小さな砂糖菓子を用意する。
『本当はこんな時間に甘いものは良くないがな』
そう言って笑いかける。
「秀吉さん…急にどうしちゃったの?」
照月をそっと抱き上げ、褥に下ろすと、
秀吉の側へと寄る。
『お前が毎日無理して笑って、わざと政宗の話を出さないようにしている事くらい
俺にはばれてるぞ。まぁ、俺だけではないけどな…』
その言葉に、泣き出しそうになってしまうのをグッと堪える。
「やだなぁ。こんな事でいちいち哀しんでたら、
この時代では生きていけないでしょう?」
やっとの思いで笑顔を作り、秀吉を安心させようとする。
『ほら、茶が入ったぞ。かしこまらずに飲め』
そっと微笑みかけて、茶器を愛の前に勧める。
「いただきます」
一口、口に含めばほろ苦い抹茶の味が広がる。
まるで、愛の心の中のように。
『あんまり無理するな。辛い時はいつでも言っていいんだぞ』
そう言って、自分の分のお茶に口をつける。
「誰かに頼っても、甘えても、なくなる事はないから…」
茶器を見つめたままの愛から、
ポツリと言葉が溢れる。
秀吉は、困ったように愛を見つめる。