第7章 LOVE LOVE LOVE(政宗)
今日も愛は、縁側に座り、ぼーっと空見上げていた。
その目には、薄っすら涙が浮かぶ。
にゃぁ…
「照月…」
まるで愛を心配するように、身をよじらせすり寄ってくる照月をそっと撫でる。
「お前のご主人様は、いつになったら帰ってくるんだろうね…」
政宗が遠方の戦に出てからもう十日以上。
五百年後であれば、日帰りできるような距離でも、
この時代では何日もかかる。
小競り合いの鎮静とはいえ、どんなに小さくても戦は戦だ。
怪我はしてないか、しっかり役目を終えて帰ってくるのか、文も届くまでに時間がかかる。
家臣思いの政宗は、無茶な事をしてないか…
待っていることがこんなにも辛いなんて。
電話でもいい。声が聞きたい。そんな純粋な願いさえ届かない戦国時代だ。
照月は、愛の膝の上で気持ちよさそうに目を閉じている。
「照月…。今日は政宗の夢を見られるかな…」
こんなに気持ちが溢れているのに、夢で会うことさえも叶わない。
朝起きると、自分が薄情なのではないかと心が押し潰される。
今、二人を繋いでいるのは、この広くひろがる空だけ…
毎日月夜に、今晩こそは夢で逢いたいと願う。
けれど、離れて一度もそれは叶わない。
今日の夜空には、政宗の様に輝く月はない。
新月の空は、より一層深さを増し、周りの星たちを際立たせるだけだ。
(政宗に逢いたい。どうか元気でいて)
『愛、いるか?』
ふと、この御殿にいるはずのない秀吉の声が響いた。
愛は慌てて涙を拭い、
「どうぞ」
と返事をする。膝に照月が寝ているため、動くのが躊躇われた。
『愛、大丈夫か?』
秀吉が心配そうに近寄ってくる。
愛は少し驚いた顔をして、
「 大丈夫だよ?どうしたの?」
と、振り向く。
『日に日に、お前の元気が無くなっていくから、心配で見に来たんだ。
茶でも淹れるか』