第6章 恋の試練場 後編
秀吉が持ってきた着物を、手際よく三成に渡し、
呆然としている三成を着付けた。
「はい、出来上がり!
晴れ着は掛けておくから、後で持っていくよ」
『愛様すみません…』
しょんぼりとうなだれる三成。
(男らしい三成くんもカッコいいけど、やっぱりこのおとぼけな感じが和むなぁ)
愛は三成を見ながら、くすくすっと笑を溢す。
「さ、ご飯行こう?」
愛が満面の笑みで促せば、三成もすぐ笑顔になり、
『はい、参りましょう!』と元気になる。
愛が襖を開けると、今まさに到着した家康が目の前にいて、
「わーっ!」『うわっ』
と二人が驚いて声をあげる。
『大丈夫ですか?愛様!』
三成が驚いて飛びついてきた愛を受け止める。
「びっくりした!ど、どうしたの!心臓飛び出るかと思った!」
まだ胸がドキドキしている愛の背中をさすりながら、
三成も、
『家康様、おはようございます。いかがされましたか?』
と笑顔で言う。
『いや、如何も何も、あんた達が来ないから迎えに来たんでしょ…
あの二人は目的が違うみたいだけど…』
と、廊下の奥にいる政宗と光秀を見る。
「そ、それはごめんね。ありがとう。今行くとこだった」
愛が言うと、家康はいつもの姿の三成をまじまじと見て、
『ふぅん。もう迷惑だから早くして…』
と、踵を返す。
急に戻ってきた家康が角を曲がると、政宗が思いっきりぶつかった。
『いって…何戻ってきてんだよ!どうなってたんだよ』
何も知らない政宗は、大声を出す。
『いたっ…もうホント勝手な事ばっかり…』
家康は軽く政宗を交わして歩き始める。
光秀は早々に察知したようで、姿はなかった。
廊下の角で、鼻を抑えてしゃがむ政宗を、
愛と三成が不思議そうに見下ろしている。
「どうしたの?」
政宗は、三成が普段着を着ているのを見ると、
当てが外れたようにうな垂れた。
『な、なんでもねぇよ。朝餉に来ないお前らが悪い!』
そう言って、慌てて家康を追いかける。
『どうされたんでしょう…』
キョトンとした三成は不思議そうに呟く。