第6章 恋の試練場 後編
『そんなに可笑しいですか?』
三成が珍しく拗ねたような声を出すと、
「ふふふ…ごめんね。でも、なんか家康が可愛いなって思って…」
そう言いながら、クスクス笑っていると、
三成が強めに愛の腰をグイッと自分に引きつけた。
「わっ!どうしたの?!」
驚いたは体制を崩し、三成にしがみつくような体制になった。
『愛…私といる時に他の殿方の事を思うなんて…
処罰の対象ですよ?しかも、可愛いだなんて…』
真剣な目の三成が自分にしがみつく愛を横抱きにし歩き出す。
二人だけの呼び名で愛を呼び、
あからさまに嫉妬を剥き出しにした三成に、
愛は動揺を隠せない。
「ちょ…三成くん…」
愛の部屋まで無言で到着すると、
そっと褥に愛を降ろす。
「三成くん…顔真っ赤だよ。お水飲む?」
愛が心配そうに顔を覗く。
『いいえ…酔っているとすれば、酒にではありません』
そう言うと、そっとの唇を指でなぞる。
「ん…」
『そんな潤んだ目で、見ないで下さい…。
何かが…抑えられなくなりそうです』
そう言うと 、なぞっていた指を外し、ゆっくりと顔を近づける。
愛が近づいてくる三成の首にそっと手を巻きつけると、
一瞬三成は動きを止めるが、一つ優しく微笑んでそのまま唇を重ねた。
優しく食むように、触れては離れる。
それは唇だけに留まらず、頬、瞼、耳、首筋…と、不規則な動きを繰り返す。
「あ…っ.みつなり…」
愛が名前を呼び唇が開いた瞬間を捉え、
急に今までとは違う濃厚な口づけを落とされる。
口内を優しく味わい尽くすような、長い長い口付けに
吐息まで三成に吸い取られるような錯覚に陥る。
(深い…もう…甘すぎて何も…)
愛が考えるのを諦めそうになったその時、突然名前を呼ばれる。
『愛…あなたの全てが欲しいです…』
何時もの天使の顔は、今は切なく余裕を無くしている。
「三成になら…全部あげる」
そう言うと愛は自ら口づけを求め、三成の顔を引き寄せた。
月明かりに照らされていたはずの二人は、空が白むまで愛を求め合っていくのだった。