第6章 恋の試練場 後編
これには、愛も流石に動揺し、
「ちょ、ちょっと政宗!頭上げてよ!」
そう懇願する。
しかし、政宗は頑として頭を下げたまま、
『いいやダメだ。もっと俺たちがちゃんとお前に寄り添えてたら、
防げたことも沢山あるんだ。だから、水に流せとは言わん。
俺たちにも挽回する機会を与えて欲しい』
「 わ、わかったから。私もちゃんとみんなと向き合う。
三成くんの事はとっても大切な人だけど、同じくらいみんなにも感謝してるの。
だけど、きっと、私は自分にちゃんと向き合ってなかったんだと思う。
私こそ、こうやって政宗が頭を下げてまでその機会を貰えるんだから、
絶対に無駄にしないって約束するから。
だから、お願い。もうこんな事しないで?」
政宗の行動に目を丸くしている家臣の前で、
愛は大きな声でそうまくしたてる。
その声は、広間にいる武将たちにもしっかりと届いていた。
政宗は漸く頭をあげると、いつもは見せない優しい笑顔で
『ありがとうな、愛』
と、もう一度愛の髪をクシャっと撫でた。
その後ろから、いつの間にか側まで来ていた秀吉が、
『よく決心つけてくれたな。俺からも礼を言う。
ありがとうな、愛」
と、優しく微笑んでいた。
広間からは、信長の声が続く。
『愛、宴と言っても、まずは俺たちだけだ。
そんなに気を使うような間柄ではあるまい。
構えずに、いつも通りのお前で来れば良い』
『あんたにちゃんと伝えないといけない事もあるしね。
遅れずに来なよ』
と、家康が言えば、
『私がお迎えにあがりますから、安心して下さいね』
と、三成のエンジェルスマイルが覗く。
自分を取り巻く武将たちの優しさに触れて、
暖かな気持ちになった愛は、
みんなに向けて深々とお辞儀をし、
「みなさん、ありがとうございます。
皆様には甘えてばかりですが、これからも宜しくお願いします」
と、はっきりした口調で伝えた。
そこで聞いていた家臣も、
『愛様、良かったですね』
と微笑む。
『夜には光秀も戻ることになっている。
愛、精一杯着飾って参れよ』
信長の楽しそうな声が響いた。