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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第5章 恋の試練場 中編


秀吉が帰ってから数刻たち、すっかり夜になった頃、

『家康、いるか?』

と、政宗が訪れた。

「どうぞ」

家康が文机に向かったまま、政宗を迎え入れる。
愛は、まだ寝たままだった。

『なんだ…目を覚ましたっていうから急いで戻って来たが、
また寝てるのか』

遠征先から早馬の連絡を受け
一目散に戻ったばかりの政宗はあからさまにがっかりして見せた。

「でも、そろそろ食事を取らせたいんです。
政宗さん、お願いできますか?」

そう家康が政宗を見上げる。

『粥がいいよな。今まで何にも食ってないんだろ?』

「そうですね。お願いします」

『愛のは粥として…四人分か。よし』

そう言うと政宗は出て行く。

「四人分?」
あと一人は誰だろうと思ったが、さして気にする様子もなく、
また机に向かい、溜まっている書状に目を落とした。


政宗が出て行って、どの位たっただろうか。

「ん…ううん…」

愛が苦しそうな声をあげはじめた。

(またか…)

「は…やく…。にげ…」

(やっぱりあの日の夢を見るのか)

今までは意識が戻っていなかったが、今日なら目覚めるかもしれない。
そう思って、家康は出来るだけ優しい声で、

「愛?愛、起きて」

と少し肩を揺する。
すると、

「ん…。いえやす…夢?」

ゆっくりと愛が目を覚ました。

「魘されてた。大丈夫?」

まだ、少し寝ぼけているのか、両腕を伸ばし家康に触れようとする。

「生きてる?」

そう言った愛は、はっとするほど切ない顔をして、
このまま消えてしまうのではと思える程の儚さを持っていた。

(誰のことを言ってるんだろう…)

とてつもない不安に駆られ、家康は伸ばされた腕を衝動的に掴み、
自分の首に巻かせ、愛を起き上がらせるように抱きしめた。

「生きてるよ」
そう答えると、愛は家康の腕の中で嬉しそうに目を細めた。

「ありがとう…」

そう呟くと、再び目を閉じようとする。
何故か家康は、直感的にここで寝かせてはならないと強く思い、

「愛?!寝ちゃダメ!起きて、しっかり目を覚まして!」

そう叫んでいた。
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