第5章 恋の試練場 中編
家康が愛の側まで行き、脈を取る。
(かなり弱いな…くそ…早く連れ出さないと)
「政宗さん、急いで下さい!脈がかなり弱い」
その声を聞くと、政宗は塞がって燃え盛っている柱を素手でどける。
漸く愛の傍に辿り着き、大声で名前を呼ぶが、
くったりとした身体からは、生の反応が途切れているのではと思うほど反応がなかった。
「先ずは外へ!」
家康が叫ぶ。
二人はなるべく愛の身体に負担にならないように運び出した。
外へ運び出したとたんに、店の中からバタンバタンと大きな音がして、
次々と天井が崩れ落ちている。
『危なかったな…』
政宗が呟く。
「家康様!政宗様!」
大きな声を出し、三成が駆け寄ってくる。
「愛様は…」
くったりと二人に抱えられる愛を見て言葉を失うが、
『大丈夫だ。まだ生きてる!』
その声に安堵し、
「馬も用意しましたが、荷車を貸していただきました。
寝かせて運ぶことも出来ますが」
家康は三成の目を見ると、うんと一つ頷き、
「荷車で俺の御殿まで運ぶ。城じゃ遠いし、薬が少ない」
そう言うと、三成の用意した荷車に愛を運ぶ。
「あと…」三成がキッと睨みつけながら後ろを見る。
「こいつらでしょうか?政宗さんたちが追っていたのは」
その目線の先には、縄でぐるぐる巻きにされ、顔はボコボコに腫れ上がった2人組がいた。
『おお怖…三成を怒らせるとシャレにならないな』
そういうと政宗がニヤリと笑った。
「今、城に伝達を頼んでいるので、もう直ぐ秀吉様たちが到着すると思います。
こちらの処理は私がやっておきますので、愛様をどうかお願いいたします」
『わかった。政宗さん急ぎましょう』
そう言うと、家康と政宗は、家康に御殿まで荷車を走らせた。