第5章 恋の試練場 中編
三成と家康、政宗の三人は、狼藉者の話をしながら、
きな臭いことに気づく。
「また何処かで火を放ったか?」
政宗が言うと、離れた場所から
『火事だ!!水もってこい!』
と、声がした。
声の方向に三人が駈け出すと、黒い煙がもくもくと上がっているのが見える。
『蕎麦屋が燃えてるぞ!』
誰かが叫んだその声に、三成は全身の体温が奪われたのかと思うほど背中がゾクリとした。
「愛様!」
急に叫んだ三成に驚いた二人は、
『どうしたんだ?!』
と叫ぶ。
「愛様とお蕎麦屋さんで待ち合わせをしていたのです」
それを聞いた二人も、生きた心地がしない。
現場に到着すれば、蕎麦屋の女将が髪を振り乱して中に入るのを止められていた。
『どうしたんだ!』
政宗が叫ぶと、女将はひたすら
『倅がー!』と、泣き叫んでいる。
すると、店の中から誰かが叫んでいるのが聞こえた。
「お母さん、聞こえますか?お母さん!!」
三人はゾクリとした。この声は聞き覚えがある。
燃え盛る火の向こうに、女が見えた。
そして、暫くすると、母親の元に男の子が泣きながらかけてきた。
「お姉ちゃんが…お姉ちゃんがぁ!」
と母親の腕の中で泣きじゃくっている。
息子が帰ってきた母親は、目の前に三成がいる事に気づき、
一番恐れていたことを口走った。
「石田様、倅を助けに入ったのは愛様です!!
どうか、愛様を!!」
その言葉を聞き、家康と政宗は水を持った衆に桶を貸せというと、
頭から水をかぶり、迷いなく中に入る。
「私もいきます!」三成が言うが、
『お前はここに残って、愛を助け出したら直ぐに運べるように手配しろ!』
と、政宗が言う。
「く…っ。わかりました。お願いします!!」
直ぐにでも飛び込みたい気持ちを抑えて、
直ぐに城に運べるように近くで馬を調達しに走った。
「弱いくせに何やってんの!愛どこ?!」
家康が叫ぶ。
『愛どこだ!返事しろ!!お前が死んだら意味がねぇだろ!』
政宗もありったけの声を張り上げる。
すると、もう直ぐ出口というところで、瓦礫に埋もれて倒れている愛を見つける。
『政宗さん、あそこ!』
「よし、二人で抱えるぞ!」