第5章 恋の試練場 中編

『これは…』

主人が包みを開けると、色とりどりの香袋と巾着が顔を出した。

『こんなに作って下さったのですか？！大変だったでしょう。
しかも、どれもこれも丁寧な仕事です』

「よろしければ、お店において下さいね」
愛はそう言うと主人に微笑みかける。

『こんなに大層な物を頂いてしまい、申し訳ない限りです』
と、主人が言う。

「いいえ、とっても楽しかったんです。これを作るのが。
本当に良い時間をいただきました。ありがとうございます」

『愛様は、本当に素敵なお方ですね。
仕立ての腕も本物ですし、人柄が素晴らしい。
石田様にぴったりだと思うのですがね』

そう主人が言うと、やりとりをニコニコとだまって見ていた三成は、
『先日も申し上げた通り、
愛様は本当に素晴らしく、私には勿体なさすぎますから…』

そう、さらっと言いのける。

愛はと言えば、主人の言葉にも三成の言葉にも恥ずかしくなり、
何も言えずに真っ赤になっていた。

『愛様、それではお暇致しましょうか』
そう三成が言うと、店の主人が三成を呼び、何かを耳打ちした。

三成は驚いた顔をしていたが、
『わかりました。ありがとうございます』
と、礼を言う。

一刻も早くこの場を立ち去りたくなっていた愛は、
そんなやりとりもあまり耳には入らず、そわそわと待っていた。

『さぁ、では参りましょう』

三成が愛に手を差し伸べると、
さっきまでの会話で恥ずかしがっていたにも関わらず、
愛は当たり前のようにその手を取る。

「お邪魔しました。また遊びに来ますね」
そう言うのが精一杯のまま、店を出る。

『本当に、あんなお似合いの二人はいないと思うのですがねぇ…』
二人が出て行くと、店の主人はそう呟き、
さっそく愛の作った小物達を店先に並べた。

『しかし良い仕事をしますね、愛様は…』
そのうちの一つを手に取り、感嘆の声を再びあげていた。