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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第1章 ワームホールはすぐ側に(家康)


「愛!!」

(まって、ごめん、そうじゃなかったんだ…!!)

慌てて愛を呼ぶがもう遅い。
まさか出て行くと思わなかった。

いつもの愛からは想像できない速さで
駆け出していった。
家康の御殿から城まではすぐだ。
襲われたりはしないだろうが、
もうこんなに暗い。
門まで追いかけるが、もう姿はなかった。

雨の降り出しそうな湿った空気が家康を包む。

「くそっ…」

今日は愛と久しぶりに逢えた。
この日をどれだけ心待ちにしていたことか。
たまに戻れた日も、愛は仕事が忙しく御殿に
呼ぶことも出来なかった。
かといって、自分もすぐに出立するため、
愛だけを責められるものではなかった。

待ちに待った分だけ、政宗への嫉妬が大きくなりすぎた。
政宗に料理を作ってもらおうと思ったのは自分だ。
愛が喜ぶのがわかっていたから。
政宗が何しに愛の部屋を訪れたかもわかっていた。
愛にやましいことなんて1つもなく、
ましてや、泣かせて帰す理由なんてひとつもなかった。

家康は重い足取りで、まだ料理の残る部屋へ戻る。
そして、愛に渡しそびれた包みをそっと開けた。
自分の大好きな山吹色の反物と、
愛に似合うだろうと選んだ夕焼け色に染まった反物。
それに合わせて見繕った簪に帯留め…
ただ、喜ぶ顔が見たかっただけなのに。

愛のことだから、自分のことを精一杯思って仕立ててくれる。
他の客や政宗へと思ったものより遥かに深い愛情で。
わかっているのに、傷つけた事が、自分への傷にもなってしまった。

そんな苦渋の思いの矛先をどうしていいかわからないでいると…

カタカタ…

天井が鳴る。
とっさに刀へと手をかけるが…

『失礼仕ります』

音を立てずに出てきたのは、見知った敵の忍だった。

「佐助…何用だ。」

『家康ファンの私としては、居ても立っても居られなくなりまして…』

「は?」

『一刻も早くお伝えしなければ…と。
あの…やっぱり今日も握手してもらえますか?』

差し出された手を無視して、

「用があるなら早く言って。」

と刀を置いた。
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