第5章 恋の試練場 中編
愛は、その申し出を嬉しそうに頷くと、
鮮やかな黄色に、品の良い錦糸の刺繍が入ったものを手に取る。
「これ、どうかな?
端切れを切り分けてるときから、
この布はとっても家康っぽいて思ってたんだ。
紐も、家康のいつもしてる襟巻みたいな色にしたんだよ」
と、屈託なく笑いながら嬉しそうに話す。
(嫌われてるって思いながら、俺を思い出すって…変な子)
そう思いながらも、何故か純粋に嬉しい気持ちがこみ上げてくるのを感じる。
『愛が選ぶのなら、何でもいいよ』
と、素直に受け取ると、
『ありがと』と、去っていく。
「お礼、言われた…」
愛は、三成が家康も自分の事を気にかけていると言ったのを思い出す。
(家康も…怖いわけじゃないんだ…)
そう思えた事が嬉しくて、自然に顔が綻んでしまう愛だった。