第4章 恋の試練場
次の日も、朝から香袋を作っていた。
三成は、数日城にいないようで、昨晩も今朝も、
1人での食事をしていた。
(ひとりも気ままでいいけどね…三成くんにも毎回悪いし)
そんな事を思いながら手を動かす。
午後には、昨日よりも倍くらいの小さな巾着たちが出来上がっていた。
(よし、お香詰めちゃおうかな)
流石にこの量の香袋を部屋の中で詰めるのは厳しいかと、
自室前の中庭に面した廊下に、籠といっしょに、通行の邪魔にならないように腰をおろす。
作り始めてしばらくした頃、
『この香りは、白檀ですね?』
にっこり笑いながら、愛の方へ愛付きの女中が近づいてきた。
「はい。私、白檀の香りが大好きなんです。
大好きだった祖母を思い出すので…。」
そう言いながら女中に笑顔をむけ、
「あ、もしお嫌いな香りでなければ、おひとついかがですか?」
そういうと、出来上がった香袋を入れた籠を差し出す。
『これ全て愛様がお作りになられたのですか?』
色とりどりの香袋は、普段使うものよりは一回りは小さい。
その一つ一つに、刺繍糸を編んで作られた紐が、こちらも色々な組み合わせでついている。
「はい。時間だけは沢山あるので…
小さく作ったので、腰や、帯ひもに括っても良いかなって」
女中は、1つ1つを丁寧に手に取り、感嘆する。
『これは素晴らしいですね!どれも可愛らしいです』
そういうと、その中でも一番地味に見える
群青色に格子柄の折り目が入った物を1つ選ぶ。
少し恥ずかしげに笑い、
「では、お言葉に甘えて此方を頂いても宜しいでしょうか」
愛は少し驚きながら、
『それは、男物の反物の端切れですから、色味も落ち着いてますがそれで良いのですか?」
すると、女中は
『実は…私の主人は、白檀の香りが大好きなんです。
お恥ずかしい話ですが、私がいつも白檀の香袋を持ち歩いているからという理由のようです…
この大きさなら、男が持ち歩いても卒がないと思いまして…』
そう言うと顔を赧らめる。