第4章 恋の試練場
愛の突然の褒め言葉に、
一瞬目を丸くし、直後に目元を少し赧らめた光秀。
『変な事を言うな…。苛めたくなるだろう』
そう言って、見慣れた意地悪な笑い方をする。
ふふっ…
『何が可笑しい』
愛に笑われ、光秀は少しだけ不機嫌な表情で問う。
「そんな急に、いつものようにしても、
もう私は、光秀さんの柔らかい顔を知ってしまいましたから、
遅いですよ…ふふふっ」
そう言うと、もう一度控えめに笑う。
『お前もだ』
え?という顔で笑うのをやめた愛。
『愛。お前も、今の笑った顔の方がよっぽど良いぞ。
お前に、暗い顔は似合わないから、間抜けな顔でいつでも笑っていろ』
光秀の言葉に、愛は
「えーー!毎日間抜け面してたら、ただの頭弱い子じゃないですか…」
と頬を膨らましてあからさまに拗ねる。
ぷっ…あっはは…
今日一番の声で光秀が笑う。
『確かにそうだな、ずっとお前の間抜け面を見ていたら、
仕事にもならないな…くすくす』
光秀が余りにも笑うので、愛もつられて、
ふくれっ面を解き、あははと笑い出す。
『でも、やっぱりお前は笑っていろ。
俺や政宗に振り回されて困っているお前も面白いが、
俯いたり、涙を流すよりは、そうやって笑え』
「そうさせてるのは、光秀さん達じゃないですか!!」
愛の抗議に、優しく口元を緩め、
『その位は構わせろ。退屈しのぎだ』
言っている言葉は、何時ものように意地悪さを含んでいるのに、
光秀の顔には、その影はない。
光秀の、違う面を見られたと感じて、
「わかりましたよ…でも、程々にして下さい」
と、愛は微笑んだ。
『さぁ、さっさと食べろ。
愛もやる事があるんだろ?』
そう言うと、光秀は全てのおかずを飯の茶碗に投げ込み食べだした。
「それ、なに丼ですか?」
『なに丼?』
「爆弾丼みたいになってますよ」
そう言う愛を見て、ニヤリと不敵な笑いをし、
『穏やかじゃない名前だな、気に入った』
と、笑う光秀。
「じゃぁ、今度作ってあげますね、爆弾丼」
と、愛も笑う。
今まででは考えられない、光秀と二人きりの時間を
心の底から楽しんだのだった。