第4章 恋の試練場
羽織の前をキュっと握って、小走りに部屋へと向かう。
(そう言えば、三成くん朝もいるのかな?)
そう思いながら、部屋の襖の前まで行くと、
そこには朝から爽やかな笑顔で迎える三成がいた。
「おはよう、三成くん。
なんか、本当に毎食ごめ…」
そう言いかけてやめた愛を三成は不思議そうに見る。
『どうしました?』
「ううん。ありがとうね、三成くん」
そう言い直す。
『その羽織…なるほど、そういう事ですか』
秀吉と一緒にいた事を悟って、言い直した意味を理解すると、
笑顔で頷く。
『さぁ、冷めないうちに食べましょうね』
そう言って三成が襖を開ける。
部屋の中にはお膳が二つ並べられていた。
「あれ?」
愛は違和感をおぼえた。
三成はニコニコと愛を見つめる。
「この朝餉…また政宗が作った?」
そう言いながら三成を見ると、
『よくわかりましたね。今日も朝早くから作って来たみたいですよ?』
「作ってきた?」
『ええ。御殿で作って持ってきたそうです。
朝は城の台所も忙しいですからね』
(政宗…)
『でも、なんで見ただけでわかったのですか?』
再び不思議そうな顔をする三成に、
「これ、全部、前に政宗が作ってくれた時に
私が美味しいって言ったものばかりだったから」
笑顔で三成に答える。
『そうでしたか。では、いただきましょうか』
三成も笑顔で返す。
これらを御殿で作って持ってくるには、凄く急いで来ただろうと想像する。
「いただきます」
一口食べれば、それはまだ温かい。
「美味しいね」
そう言って顔を綻ばせる。
『えぇ。政宗様の料理は本当に美味しいです』
「政宗、なんでこんなに作ってくれるのかな?
夕べもきな粉餅置いてあったし…」
独り言のように呟く。
『それは…』
三成の声に愛が顔を向ける。
『愛様に、笑ってもらいたいからだと思いますよ』
思いもしない言葉に驚く愛。
「どういう事?」
『政宗様は、愛様が笑顔で美味しいって言ってくれる事が嬉しいようですから』
「そっか…何か私が着物を作る時とおんなじなんだね…」
そう言うと、愛は政宗の気持ちをゆっくり噛みしめるように
朝餉を楽しんだ。