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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第4章 恋の試練場


『そこは、ありがとう なのか?変な奴だな』

自然にありがとうという言葉を出した愛を、
不思議そうな顔で秀吉が見る。

「ありがとう…だよ。私、此処では何にも役に立てないし、
光秀さんや政宗も、どうせそのうち揶揄うのにも飽きるでしょ?
そしたら、自分の存在なんて、すぐ無かったようになってしまうんじゃ無いかって…
でも、何か役に立てる事があるなら、私もここに居る意味あるかもって思えるから…」

今までコロコロ笑ってた愛の顔に、哀しみが混ざる。

『お前…そんな事思ってたのか?馬鹿だなぁ。
そもそも、愛は、ここに居るだけで御館様の役に立っているんだぞ?
それに、愛の居ない昨日の夕餉は悲惨なものだった。』

「え?」
愛は目を丸くして驚く。

『まるでありゃぁ葬い日だ。
みんな黙々と食べてるだけだったからな…
味も何もわかったもんじゃ無い』

そう言うと、秀吉は肩を竦めてみせる。

「それは…たまたまでしょ?
いつも、凄くピリピリして、みんな怖い顔してたし…」

今度は秀吉が驚く。

(そうか、お互いを牽制していたから、愛には怖かったのか…)

『思い過ごしだ。愛は此処にいて貰わなきゃ困る。
もうとっくに、安土城に必要な姫様だ』

そういうと、外で冷えた愛の頬を両手で挟むと、
そのままグッと上に釣り上げる。

『ほら、そんな顔するな。笑ってないと勿体ないぞ』
そう言って笑いかけて、そっと手を離す。

「ありがとう、秀吉さん」
そう言って微笑み返す。

『愛の気持ちが落ち着いた時に、戻って来い。
みんな、待ってるから』

秀吉が言い終わったタイミングで、廊下から女中の声がかかる。

『愛様、こちらでしたか。
朝餉の御用意が整いましたよ』

「ありがとうございます。今参ります」

愛が大きな声で返事をする。

『よし、中に入るか。沢山たべるんだぞ?
俺もそろそろ行かないとな』

と秀吉が言えば、愛はにっこり笑って頷く。

「あ、秀吉さん羽織…」

『寒いから部屋まで着ていけ。
そのうち取りに行くから』

そう言うと、最後に一度愛の頭にポンと優しく手を置き、
広間への廊下に向かっていった。

(ありがと…)



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