第4章 恋の試練場
『こら、愛。まだ外は寒いんだ。外に出る時は羽織を羽織れっていってるだろ?』
そういうと、自分の羽織を脱いで愛にかける。
何時もの注意事項と違って、秀吉の表情は柔らかい。
愛は一瞬にして、秀吉の香りに包まれる。
「ごめんなさい。あ…秀吉さんのいい匂い…」
自然に笑顔と言葉が滑り出す。
(そんなに可愛い顔するな…)
羽織をかけおえると、秀吉は愛の頭を撫でながら
『俺は、ご で始まる言葉よりも、あ で始まる言葉の方が好きだ』
と、笑いながら言う。
「そうだったね。ありがとう秀吉さん」
そう言うと愛は秀吉を見上げ、眩しそうな顔で笑う。
(やっぱり、笑った顔の方がいいな、愛は…)
『よく出来たな。よしよし』
そう言うと、少し頬を赧らめて、もう一度愛の頭を撫でる。
『お前は、そうやって笑っている方が可愛いんだ。忘れるなよ?な。』
うん…
と、笑顔のまま頷く愛を見て、秀吉の顔もつられてもっと綻ぶ。
「秀吉さんも…」
『え?』
「秀吉さんも、優しく笑ってる方が私は好き」
(…っ。)
突然の【好き】という言葉に、耳まで熱を持つのがわかる。
『お前なぁ…そんな事、簡単に男に言うな…』
そう言うと、
『特に政宗と光秀にはな?』
そう言って笑い、撫でていた愛の頭をポンポンと軽く叩く。
『昨日は三成が粗相しなかったか?』
そんな事はしていないのを、もう知っている秀吉だが、
この時間を失いたくなくて話を続けた。
「粗相なんて!私が頼ってばっかだったよ?」
そうかそうか、と綻んだ顔のまま秀吉が頷く。
『愛、三成が忙しい時は、俺を頼ってもいいんだぞ?』
そう言うが、
「三成くんが忙しいのに、秀吉さんが暇な事なんてないでしょ?」
と、コロコロ笑う。
『それもそうか…』
と秀吉は少しバツの悪そうな顔をする。
『今日は、何をする予定なんだ?』
秀吉が話題を変える。
「昨日、三成くんのために反物選んだから、
羽織作り始めるよ!」
キラキラした目でそう言う愛に、
『そうか、お前着物仕立てられるんだってな。
凄いじゃないか。今度、俺のも頼むよ』
「ありがとう!嬉しいな」