第4章 恋の試練場
「よし、貴様らで誰が一番最初にこの場に愛を戻せるかを競え」
酒を煽り、上機嫌の信長が楽しそうに言う。
『そ、そんなお戯れを…』
秀吉が焦っていうが、聞き入れては貰えない。
「ただ、焦るな。まずは、各々が愛を笑わせる事ができるようにする事だ」
さらに杯を進める。
「三成以上の攻略をできるかだな」
と、今度は大きな声を出して愉快そうに笑って言う信長に
なんとなく全員流され…
と、言うよりも、各々は
(言われなくてもそうする)
と思っていた。
ああだこうだと、それについて話しているところへ、
愛との夕餉を終えた三成が戻ってくる。
「ただいま戻りました」
その声を聞き、顔を上げた信長は
『今日はご苦労だったな。
愛はどうしている』
と訊く。
「愛様は、おやすみになられたと思います」
と三成。
『別に戻ってこなくても良かったのに…』
と家康が言えば、
「ありがとうございます。
でも私は疲れてませんから大丈夫ですよ」
と、いつもの噛み合わない答えが返ってくる。
『今日の愛は、さぞ可愛かったのであろう?』
光秀が口を開く。
「えぇ、いつも通り愛様は可愛らしかったですよ」
と微笑む。
『悪ぃ、三成…。さっき、立聞きした…』
バツの悪そうに政宗が言うと、
「大丈夫です。外に誰か居るのはわかってました。
きな粉餅も、ちゃんと召し上がって頂きましたよ」
何の問題も無い顔で三成は言う。
『そうか…』
と政宗が呟けば、
「安心して下さい。とても美味しいと笑っていらっしゃいましたから」
と、三成。
秀吉は、複雑な顔で三成を見る。
自分が信長の右腕であれば、三成は秀吉の右腕となる存在だ。
今は可愛い弟のような存在。
なのに、何歩か先を行かれた気分になっていた事が情けない。
「秀吉様、如何なさいましたか?」
ずっと見つめられた三成が不思議そうに訊ねるが、
『いや…なんでもない』
とだけ応える。
『三成、今日一日の報告をしろ』
と、信長が言えば、
「かしこまりました」
と、何一つ包み隠さず三成は今日あったこと、行った店、
愛の様子などを事細かに報告した。