第4章 恋の試練場
今日一日の殆どを一緒に過ごした三成と、夕餉をまた食べている。
普段は怖さが勝る信長の優しさを垣間見る。
「信長様は、私みたいな者の事も、ちゃんと見てくれるんだね。
今までなんだか誤解してたかも。」
食事をしながらぽつりと呟く。
『信長様は、愛様と出逢われた日から今日まで、
ずっと愛様の事を見て下さってますよ』
三成が笑顔で話しかける。
「え?」
『信長様だけでは有りません。秀吉様も、政宗様も、光秀様も、家康様も。
もちろん、私も。皆様の接し方は千差万別ですが、ずっと愛様を気にかけていますよ』
その三成の言葉に、愛は「そんな事ないよ」と力なく眉尻を下げる。
「光秀さんと政宗は、私をからかって面白がっているだけでしょ?
秀吉さんは…確かにお母さんよりも気にかけてくれてるかもだけど…
気にされすぎてて申し訳ないし…
あと…家康さんに関しては、完璧に嫌われてると思うし。。」
その愛の発言に、三成は優しい声で言う。
『愛様。今日私は愛様と一日一緒にいて、
まだまだ自分の知らない愛様がいる事に正直驚きました。
好みの食べ物や、好みの色、細やかな気遣いに、手の温もり。
そして着物や生地への愛情、仕立ての腕前。
もっと相手をよく知り、攻略の方法を常に考えていなければならない
私でも、こんなに知らない事があったのかと、反省した程です。
愛様は…いかがでしたか?』
そう三成に言われ、愛は驚くが、少し考えてみると
確かにそうなのかもしれないと思った。
「確かに…。今まで三成くんとはお城の中では一緒に話したり、
側にいたりする事は多かったのに、一歩外に出てみたら、
全然知らない三成くんばかりだったかも。
いつも、部屋に篭って集中してることが多いのに、
城下にあんなに知り合いの店がある事も意外だったし、
お豆腐好きな事も知れたし、私の着物に合う簪をあんなに一緒にいたのに
知らないうちに買えちゃう技もびっくりだし…」
にこっと微笑み三成はウンウンと首をふりながら愛を見る。