第5章 5
「あの……一体、何がそんなにおかしいので…?」
もしかしてやっぱり頭おかしかった?
さっきまでのが演技だった?
恐る恐る聞いてみれば、笑いすぎて流れた涙を拭きながら審神者が言う。
「私ね、演練で何かと揉めることが多くてですね。
そのたびに"こいつブラック審神者だー!"
って通報されるんですよねー」
「え、えぇ……」
本当ならば気の毒な話である。
確かに先ほど"8回目"とかなんとか聞こえたような気もするが。
「では、あなたの本丸は、ブラックではないと主張されるのですね?」
一応、気を取り直して訊ねてみる。
彼女が言っていることが嘘であることも、
動揺しすぎて笑っている可能性も、十分にあり得るのだから。
「ふむ。その前に一つ聞きたいのだが、よいだろうか?」
「なんでしょう」
のんびりとした声で三日月に問われ、私は仕方なしに応じた。
三日月宗近という刀剣男士のなかには、たびたび審神者に害を加える個体が散見される。
軽んじて扱うと危険、とまで言われている男士なので、おいそれと無下にはできない。
「通報した審神者が、如何様な理由でこちらを黒と断じたのか。一つ、このじじいに教えてはくれまいか」