第1章 1
殺戮は迅速だった。
先ほどまで身体を重ねていた三日月は、
何が起こったかわからない、という表情のままで折られた。
私は慌てて夜具を手繰り寄せ、
惨劇から逃れようと必死に後ずさる。
三日月の首から吹き出した血を頭にかぶったその瞬間に、
情事の後の気だるさなど吹っ飛んでいた。
「いやぁ、ここまで呆気ないとは思わなんだ」
鷹揚に笑う声は、先刻まで自分と交わっていた相手と同じもの。
顔を汚した返り血が、かえって月明かりに浮かぶ美貌を凄艶に彩っている。
だけど、おかしい。
――どうして、ここに"二振り目"がいるの?