第1章 狐日和
「……人と人が出会うって、不思議っすよね。会う人によって、運命って変わるもんなんだって今オレ思うんですよ」
何言ってんのこいつ?
もう酔ってるのかな?
「良いようにも変わるし、悪いようにも変わる。良い出会いだと思っても、悪い結果になる事もあるし、その逆もある。……まあ、結局自分次第って言われたらそれまでなんすけど」
会えなかった間の話だと気付いて、私は城戸ちゃんの方を見た。
要するに、色々あったんだな。
今まで見ていた大きな夢を捨てようと思うくらいの、色々、たくさん。
人との出会いは彼のような仕事なら、とても重要だと思う。映画の中でしか見たことないから分からないけど。
でっかい事をするより、でっかい物を得たんなら、いいんだけど。
「……さくらさんが居てくれて、オレを待っててくれて、本当によかった。さくらさんに会えて、よかったです」
ぐっ、と目の奥が熱くなる。
それを堪えて、発泡酒を一口煽った。
それから缶を置いて、城戸ちゃんの顔を見て、首筋に腕を回して、キスをする。
「さくらさっ……」
「今頃気付くなんて、遅いっつーの」
わたわたする城戸ちゃんに構わず二度、三度とキスを落とすと、観念したのか城戸ちゃんの腕が私の腰を抱く。
「……オレ、頑張りますね」
「……うん、応援する」
ころころ表情が変わる、狐日和のような彼。
私が見ている彼の姿ももしかしたら偽りの姿で、私に合わせて風采の上がらない人物を演じているのかもしれない。
でもそれでも、雨の日も晴れの日も、
私は彼と一緒に居たい。
終