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狐日和【龍が如く4/城戸武】

第1章 狐日和



「オレねえ、でっかいことやりたいんすよ」

私の隣で呟く若い男。

茶色と黒のメッシュの少し長めの髪を後ろにラフに撫でつけたオールバック。
切れ長の目が好きで、それを伝えると柄にもなく照れる素振りを見せて、それがまたかわいかった。
よく懐く犬みたいな印象の彼。

これでも、極道。いわゆるヤクザ。

「おっきいことって、何?」
「……今はまだわかんないすけど」

私からの追求に、決まり悪そうに横を向く。

「……そうなんだ」

でっかいことなんかしなくていいから、私の隣にいてくれたらいいのに。
でもそういうのは、彼を困らせてしまう。

「そしたら……さくらさんのことも幸せにできるかな」

横を向いたまま、ポツリとつぶやく。
私の幸せ、でっかい事のついでなの?
なんて、意地悪なことを言って困らせようかと思ったけど、嬉しかったからやめた。


「そっか……出来るといいね、でっかい事」

こっちを振り向いた彼の笑顔は、輝くほどの笑顔。
ああもう、かわいいなあ。
なんでこの人、ヤクザなんかやってるんだろう。


「だから、さくらさんのこと好きなんです。……オレみたいなヤツの事でも、ちゃんと認めてくれて」

認める……か。
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