第2章 オムライス
テーブルにつき、城戸はキツネの絵が書かれたオムライスを前にして、手を合わせた。
「いただきます」
「いただきまーす……って、城戸ちゃんってホント、ヤクザって感じしないね」
「……こう見えて一応舎弟もいるんすけど」
「そうなんだ、ごめんごめん」
特に悪びれる様子もなく、さくらはオムライスにぱくつく。
「おいしい!全然不味くないよ!謙遜しちゃってもう」
「いや……はは、サンキュっす」
「大体なんで城戸ちゃんオムライス作れるの?昔洋食屋さんでバイトしてたとか?」
「いや……俺中学出て割とすぐこっちの世界入ったんで。……拾ってくれた今の組の親父のね、好物なんすよ」
「親父、さんの」
「はい」
「…………ぶふ、いや、あの、ごめん」
さくらは顔を覆って笑いをこらえている。
さくらは親父の顔を知らないはずだが、世間一般でコワモテで通るようなヤクザの親分の好物が、オムライスと聞いて笑わないでいられなかったのだろう。
「……はぁっ。それで、城戸ちゃんも作れるようになったんだ。オムライス。」
「そうなんすよ。洋食屋とかの出前のオムライスじゃ、親父の口に合わないってんで親父の好みの味のオムライスをね、何度も練習させられました」
今度はさくらはスプーンを置いて、後ろを向いて肩を震わせ始めた。
ヤクザの親分の為にオムライスを練習するヤクザ。
想像して可笑しくてたまらなくなってしまったのだろう。正直自分でも話していてこんなに面白おかしくなるとは思わなかった。