第2章 オムライス
「えっ」
「だからぁ、城戸ちゃんが料理するの」
さくらの家に初めて「お呼ばれ」した城戸は面食らっていた。彼女に「夕食をご馳走する」と言われて招待されたのに、いざ彼女の家に来てみたらこの展開。ふざけているのか?とも思ったが彼女は大真面目だった。
「調理器具も食材もガスもうちのなんだから、"ご馳走する"のには変わりないじゃん」
これは、いっぱい食わされたか。
「いやいや、俺そんな料理なんてするタマじゃないですし、さくらさんの口に合うものなんて出来ないですよ」
「こないだ卵料理なら出来るって言ってたじゃない」
「言いましたけどォ……」
ああ、やはり覚えていたか。
でもそれくらいなら彼女にだって出来るくらい簡単なもののはずだけど。
「とりあえずやってみて、ね?何作れるの?」
「…………オムライスッス……」
「オムライス!?凄いじゃん。ケチャップライスのやつ?」
「はい……いや、マジで作るんすか?」
「うん。材料足りなかったら言って?買ってくるし」
それならいっそ、コンビニで出来合いのものを買ってきて欲しい……と言おうとしたが、さくらの期待に輝く目を見てしまうと、もう何も言い出せなかった。
「知らないっすよ、不味くても」
「いーのいーの」
「何がいいんですか……」
言いつつ、スカジャンを脱いで腕まくりをしシンクで手を洗う。
「ミックスベジタブル、あります?」
「あるある!」
「じゃあそれと、タマネギも」
「うん、鶏は胸肉でいい?」
「OKっす」
食材は幸運にも、というか不運にも、というか、一通り揃っていた。
ため息を吐きつつ、調理に取り掛かる。