第80章 特別
あぁ、今日も俺の元へ帰ってきてくれた。嬉しい…それだけで胸がいっぱいだ。
「映画は良く解らなかったけど、歌仙の好きそうなお皿とかなら見られたよ。あとお昼ご飯が美味しかった。」
今度は長谷部と行きたいな、と顔を上げた主をまた抱き締める。
特別だ、愛してる、俺だけだ、信じてほしい…そう言って下さった言葉を信じると決めた。
正直言えば、不安しかない。
それでも、全ては本丸の為、即ち主の為だ。俺一人黙っていれば全ては上手く収まる。
「長谷部、ごめんね。大好きだよ。」
まるで痲薬の様だな。
その一言だけで、全てがどうでも良くなってしまうのだから。
「ね、あるじ、もっと俺を呼んで下さい。」
「‥長谷部、私のはせべ。愛してるよ。」
驚くほどの早さで不安が消える。自分の単純さに苦笑した。