第80章 特別
「主、お帰りなさいませ。休まれますか?それとも本丸と連絡をとりましょうか?」
部屋に入ってから、ずっと俺に抱き付いて黙っていた主が、奥さんみたい、と小さく笑う。
奥さん?
「主??」
「‥長谷部にする。」
朝、俺があんな事を言ったから気にしているんだろうか?本当は行かないで欲しいです、なんて子供染みた事を言ってしまったから。
「だめ?」
「いえ、主の思うままに‥」
良かった、と安心した様に溜め息をついた主を抱えてベッドへ腰掛ける。ぎゅっと首に腕を巻いて、擦り寄って来るそれは猫の様だ。
背中を撫でると、凄く落ち着く、と笑う。
「…今日は楽しかったですか?」
さらさらと髪を梳かしながら、主の首元に顔を埋める。