第76章 情慾
あぁ…触りたい。
その耳と首に掛かる黒い髪を梳かしたい。その細い肩を抱きたい。この前触れた白い項の先を知りたい。
この握られた細い指一本一本全てに口付けがしたい…
「主殿…」
そっと引き寄せて、背中に手を回す。
「…い、ちご?」
「………。」
自分の思っていた以上に、主殿への情慾が深い事に気付き、思わず苦笑いしそうになるのを飲み込んだ。
「…この方が落ち着かれると思いますよ。弟達は、こうすると良く寝たものです。」
「…そう、なの?」
我ながら、良くもまぁ適当な事を言ったものですな。
背中を撫でると、黙って目を閉じる。