第76章 情慾
「一期、ごめんね。あの、私まだ眠れなくて‥だから少しこうしていてもいいかな…」
私の方へ近寄り、手をきゅっと両手で握って胸に抱く。
瞬間、どくんっと胸が高鳴った気がした。
あぁ、なんて自分は単純なんでしょうね。添い寝は弟達に毎日していたし、前に主殿に甘えさせてもらった時や、抱き締めた時は平気だったのに。
手の届かなかった物が傍にあるというだけで、こんなにもどろどろとした気持ちになるなんて思いもしなかった。
「…大丈夫ですよ、主殿のお気の済むまで。」
「ありがとう‥」
そう言う主殿に握られた手が熱くて、ぞくっとする。