第76章 情慾
主殿を真ん中に、川の字で横になって天井を見つめる。
うちの本丸では、粟田口や左文字には大部屋が与えられていて、夜は皆でそこで眠る。二人以上で寝るのは久し振りですな‥
本丸からこちらへ来て早七日、本丸へはいつ帰れるでしょうか。主殿も薬を服用されてるとはいえ、お辛いでしょう。連絡をとっているとはいえ、やはり弟達の事も気になります。
そんな事を考えていれば、先程まで主殿としりとりをしていた薬研の寝息が聞こえているのに気付く。
「また考え事をし過ぎていましたな‥私もそろそろ…」
一人呟くと、不意に左手を握られる。
「……主殿?」
左を向くと、布団から手と鼻から上だけを出した主殿がこちらを向いて小声で私を呼ぶ。