第75章 花浜匙
初めて入ったその部屋には、主がトルソーと言っていた人形や、本丸にあるような物とは違う大型の電動ミシンや古い足踏みのミシンまで置いてある。
「こりゃ…凄いな。」
「あぁ。本丸に居る頃は初めはただの趣味なのかと思っていたがな、そうでは無いらしい。」
桜の壁掛けや加州の首巻きの刺繍、五虎隊の虎が着けている首輪の出来を見て思ってはいたが、やはり、これが主が審神者になる前生業にしていた事なんだな。
「こちらへ来てから、主の知らなかった事が解って嬉しいか?」
「…そうだな。だが、出来るなら幸せな生活を送っていて頂きたかった。」
部屋の端にあった機械の電源を入れる。