第34章 幻の向こう
「で、でもあの時代はまだ検非違使が出るはずは‥」
政府から通達があったように警戒していたし、絶対にそれはない。
「あぁ、そうだ。だから俺っち達も最初は驚いたよ。それでもあいつ等は現れた。」
「…けど、それなら倒すだけだからね、僕達は戦ったんだよ。あの時すぐに戻る判断をしていたら何か変わったのかな‥今までに戦ってきた検違使非とは比べ物にならなかった。あいつ等異常に早くて、薬研君や長谷部君でも追い付けなかったんだよ。」
「だから、最後の一体になった時、大太刀連中はもう動けない状態だった。骨喰兄さんも狙い撃ちされてぼろぼろだ。そんな中、長谷部の旦那だけが、空間の歪みに気付いたんだ。」
血の滲む包帯に目を落としたみっちゃんが、声もなく頷く。