第34章 幻の向こう
「歪み‥?」
「転送装置が作る扉の中みたいに、裂けた空の向こうの空間が歪んでいたんだ。だから長谷部君は重傷者を心配して先に帰還しろと言った。」
「勿論、長谷部の旦那を置いて行くなんて無理に決まってる。だから急いでこっちと繋ぐ扉を開いて、重傷者だけを先に返した。それから…」
重たくて張り詰めた空気に押し潰されれそうだよ。喉の奥がカラカラだ。沈黙が辛い…
「…‥俺っち達が見たのは、最後の一体を斬った長谷部の旦那の後ろの空間に、別の大きな裂け目が出来たところまでだ。」
じゃあ長谷部、は…?
「‥っ、長谷部の旦那は…」
「は、長谷部は?ねぇ…?」
「長谷部君は‥次元の狭間に飲み込まれたんだよ。」