第34章 幻の向こう
重傷者は次郎ちゃん、石切丸さん、ばみちゃん、中傷者は薬研とみっちゃん。
あと少し傷が深ければ皆が重傷だったはずだ…痛々しく抉れた傷口を布で押さえる。部隊が壊滅状態になるなんて何があったんだろう‥それに長谷部は?
そう思った瞬間、手が震える。皆がこんなぼろぼろなんだもの、もしかしたら、もう長谷部は……
「‥大将、落ち着いて聞いてくれよ?」
薬研とみっちゃんが目配せをして、ゆっくりと話を始める。
「‥検非違使が出たんだ。俺達、なんとか軽傷で敵の本陣を落としたんだよ。でも、帰還する時だった…長谷部の旦那が何かおかしいって言い出して、そしたら突然空が裂けたんだ。」
思い出しているのか、薬研が唇を噛み締める。