第31章 甘えかた
「はい!いいよ。一期、ほらおいで?」
自分から言っておいて、いざそうなると恥ずかしいものだな。開かれた両手の間に恐る恐る身体をずらす。すると、膝立ちになった主殿が、そっと背中に腕を回し、ぎゅうっと抱き締めてきた。
こんな事、弟達には絶対言えないな‥
「一期はいつもあんなに沢山いる弟達の面倒を見てて、偉いね。それに誉だって沢山取った!一期はまだここに来て日が浅いのに、凄い事だよ。」
頭を撫でて背中をとんとん、とゆっくり叩く。
ああ、落ち着くな‥温かくて気持ちがいい。主殿の胸から響くとくんとくん、という音と甘い香りにホッとする。
甘える、とは良いものなんだな。弟達もこんな気持ちなんだろうか?目を閉じていると、じんわりと胸が温かくなったように感じた。