第31章 甘えかた
苦笑いしながらそそくさと主殿の部屋の前から立ち去る鶴丸殿を見送る。まったく、鶴丸殿は本当に懲りない方だな。次は何を仕出かすのやら…さて、私も行きますか。
「主殿、一期一振です。少しよろしいですかな?」
「ん?今度は一期?珍しいね、どうぞ?」
襖を開くと、炬燵に入って裁縫をしている主殿が手招きをする。
「お邪魔してしまい申し訳ありません。実は私も誉の桜が貯まったのですが、どうにも褒美が思い付かなくて…」
「そうなんだ、思い付かないのかぁ‥それより一期、おめでとう、よく頑張ったね!」
そう言って、炬燵に裁縫道具を置くと、急いで傍へ寄って来た主殿が頭を撫でてくれる。
やはり慣れませんね、どうしても誉める側になる事が多いせいかな。