第94章 今を生きる
「詩集?ソネット集とは何ですか?」
「あー‥そんなのも持って来てたっけ。歌仙が喜びそうかなって思って適当に詰めたんだ。ソネット集っていう書き方?形式?ごめん、上手く説明出来ないや…とにかく有名な詩集です!」
「ふふ、なるほど。シェイクスピア、ですか…」
本棚に囲まれた中で座り込む二人は見えるけど、ここからじゃ手元が見えないし何をしてるのかまでは解らない。けど、何か読んでるのかな?パラパラと紙が擦れる音がする。
「…君を夏の日にたとえようか。いや、君の方がずっと美しく、おだやかだ。」
「ちょ、何で朗読!?」
「いえ、とても情熱的な絶唱だと思ってつい。‥どうです?俺がこんな事を言ったら…」
顔を両手で隠した主を覗き込んでいる長谷部さんは、遠見からでも何だか嬉しそうだ。