第92章 夜桜
短刀君達が喜びそうなブランコや、大きな滑り台などの子供が遊ぶ遊具が設置された公園の脇から、芝生の生い茂る広場に進む。桜の花が満開の頃は、きっとお花見客でごった返したんだろうね。
そんなこの広場も、今はすっかり落ち着いて、お花見に来ている人も数える程だ。
「凄く大きな桜だね、いつからここにあるんだろ…」
「ああ、本丸の桜とは色も形も違う種類だね。」
広場の一番奥、元はお城があったであろう石垣に、寄り添う様にある大きな白い桜の木が、さわさわと花を揺らしていた。熱心に植物の図鑑を眺めていた長谷部君や鶴さんなら解るかな…
「もこもこの白い花が可愛いね。」
ちゃんが背伸びをして桜の花に手を伸ばす。丁度その時、城跡の石垣とお堀を囲う様に付けられていた提灯形の電灯に光が灯った。