第90章 残り香
海や図書館とは反対側の道を行き小道を抜け、桃色の蕾が目立つ、大きな木が真っ直ぐに並ぶ河原へやって来た。
「主殿、寒くはありませんか?」
「うん、大丈夫だよ。ありがとう。」
穏やかに流れる川と、さわさわと風に揺られる木々が、見ているだけで心を落ち着けてくれる。
「ここは江雪殿や鶯丸殿がお好きそうな場所ですね。…あれは何の木なんでしょうね?」
「あれは桜。ここはまだ寒いから蕾だけど、少し離れた場所に夜桜で有名な場所があってね、そこはもう咲き始めてるんだ。」
帰る前にお花見しようね、と微笑む主殿の手を握って頷いた。
そういえば、本丸も今は桜の花が綺麗に咲いていましたね。花見をするなんて言ったら、弟達が大はしゃぎしそうですな。