【黒子のバスケ】 囚われ王女と獣の城 【裏夢R18】
第12章 温熱
…頭が痛い。体も重たくて、熱い…そしてなぜかすごく寂しい…
だから…気づいたら花宮の手を取っていた。
酷いことを言ったのに花宮は傍にいて私の髪を優しくなでている…
貴女「昔…こうやって熱をだして倒れたとき、よく母さまにお伽話をしてもらったわ…それを聞いていると、自然と眠くなってきて…あのときは…すごく幸せだったわ。」
花宮「…そうかよ」
貴女「ふふっ、私…子どもみたいね」
熱のせいか、いつもよりも余計なことを思い出してしまう…
花宮「じゃあ、お伽話をしてやろうか」
驚きのあまり言葉なく花宮を見つめる。花宮は目を逸らし、掛け布の上に視線を落として語り始めた。
花宮「昔、他人の不幸を喜ぶ性格の歪んだ少年がいました。」
花宮はいつもの声のトーンで落ち着いている。
花宮「少年は幼い時に両親に捨てられ、住む場所も食べるものもなくただ1人放浪していました。そんなクソみたいな生活をしていた少年は、嘘や盗み、殺しを覚えました。やがてその少年は悪童と呼ばれるようになり近寄らなくなりました。」
…私はその話が花宮の過去だということを知るのに時間はかからなかった。
花宮「ある日少年は大国に出かけた。その国にいるのは裕福な貴族ばかりで盗みがいのあるものばかりだった。だが事はそう上手くはいかなかった。」
貴女「…」
花宮「少年は盗みに失敗し国の牢に閉じ込められました。それから日は流れ、死を覚悟した少年の前に1人の皇子が現れた。」
皇子…赤司くんのことだろうか…?
花宮「皇子は少年にこういった。僕ならばお前を自由に出来る。ただし、僕の下で働く事が条件だと…少年は生きるために皇子の元に残りましたとさ。めでたしめでたし」
貴女「…」
(本当は幸せな はずはない…花宮は…本当は)
人に愛されたいんじゃないのか…とそう言いたかったが、意識は遠のいていく。
複雑な気持ちになり私は眠りについた。