第103章 LOVE LOVE LOVE
(Sサイド)
今日は2月14日。
スクールバッグの中には、昨日勇気を出して買ったチョコレートが入ったままになっている。
もしも…
もしもだけど…
バレンタインデーを“気になる人に告白できる日”だと捉えるなら、同性へのそれもアリだと思っていいんだろうか。
そんなことを考えながら僕は、黒板ではなく前の席にいる人の背中を見つめた。
智くん。
僕の大好きな智くん。
…友チョコとしてなら渡せるかも、なんて。
いや、ダメ、そうじゃない。
それは自分的にしっくりこない。
だって、目の前にいるその人に抱いている思いは、友達以上の感情だから。
「しょーくん、さっきからため息ばかりだね」
今まさに僕の頭の中をめぐっていた人が振り向き、小声で話す。
数センチ近くなった距離にドキッとして、僕は咄嗟に俯いてしまった。
今は授業中。
「ため息でてた?」
下を向いたまま、僕も小声で返事をする。
「うん。体調でも悪い?」
「大丈夫。ちょっと考えごとしてただけ」
「それならいいけど…」
優しい声色のあと、僕たちの距離は元に戻っていく。
智くんには心配かけちゃったけど、僕のことを気にかけてくれたことが嬉しくて。
僕は再び智くんの背中に視線をうつした。
智くん…
好きだよ。
大好き。
心の中では、何度だって言えるのにな。