第100章 キミとボク
「智くん、楽譜は持った?」
「うん。ちゃんと持った」
「じゃあ、早く行こう?」
「うん」
音楽室への移動。
まだ間に合うのに、余裕をもって着いていたいキミは、先に教室のドアに向かって行く。
その背中を見ながら、ボクはこう思ったんだ。
翔くん。
キミを意識し始めた日を、ボクはハッキリと覚えてるよ…
なんて言ったらさ。
キミはどんな反応をするんだろう。
“もう、なんなのぉ。やめてよぉ~”って照れ隠しするようにさ、ボクの腕をバシバシ叩いてくる?
それとも…
“嬉しいな、ありがとう…”ってハニカんでさ、喜びを噛み締めるように胸に手をあてたりする?
なんて。
キミの反応を想像するだけで、ボクの胸はあったかくなるんだ。