第99章 Bittersweet

バッグはダミーでケーキが本命…？

俺には大野さんの言ってることがよくわからなかった。

だけど、目の前にいる大野さんはとてもニコニコしていて。

俺までつられて、ニッコリしてしまいそうになる。

ケーキを“買った”ではなくて“本命”と表現した大野さん。

次第にそれは、何か大野さんにとって大切な意味合いがあるのかもしれないと感じ始めた。




頭の中でぐるぐる考えている俺に、

「櫻井はどれがいい？」

大野さんから声がかかる。

ケーキの箱は中身が見えるように、少し開けられていた。

あの甘い匂いが漂う。

「どれがいい？」

大野さんの表情に胸が跳ねた。

…どうしてそんなにキラキラした瞳で、俺を見つめてるんですか…？

ケーキよりもまず、大野さんから目が離せない。

「櫻井？」

「えっ、あの…」

「ケーキ、嫌いか？」

今度は不安げな瞳で見つめられて。

「いえ、好きです。大好きです」

俺は速攻で答えた。

「んふふ。良かった。はい、どれがいい？」

再びケーキの箱の中身を見るよう促されて。

大野さんがすっごく嬉しそうにしているから、

「じゃあ…」

俺もワクワクしながら中を見てみた。




「えっ…」

これって…

“どれがいい？”

なんて、選択肢はないじゃないですか…

大野さん。