第97章 ビバ・青春
帰宅した僕はベッドに寝そべりながら、リコーダーを見つめた。
吹きはしないけど…
ドキドキしながら吹き口の部分をゆっくり咥えてみる。
舌をそっと出して感触を確かめたけど、自分のものかどうかは…やっぱりわからない。
うーん。
リコーダーを口から離し、何気なく底の部分を見てみた。
“オオノサトシ”
消えかかってるけど、マジックで書いた跡がある。
少し間があいてからドクンと胸が跳ね、顔がカァッと熱くなった。
「お、お、おおのさとしぃ~っ?」
翌日、大野くんも様子がおかしかった。
放課後。
「名前が書いてあって…」
「吹き口の感触が違くて…」
持ち帰ったリコーダーを交換した。
そして…
お互いに間接キスのことで、今日1日頭がいっぱいだったことを知った。
そんな僕たちだから…
その流れで告白、なんてできなかったけど。
大野くんと仲良しになれたのが嬉しい。
好きな人と間接キス…
お互いに意識しすぎて、もう暫くぎこちないまま過ごすことになる。
END