第97章 ビバ・青春
♪ド~レ~ミ~ファ~ソ~ラ~シ~ド~
僕は誰もいなくなった教室で、リコーダーの練習をしていた。
“次回はリコーダーのテストするからなぁ。各自練習しておけよ~”
今日の2時限目の音楽で、先生がそう言った。
だけど。
僕は家で練習…うーん、やっぱりできないよなぁ。
「あれ?櫻井くん?」
「お、大野くん…」
突然のクラスメイトの登場にビックリした。
いや…
厳密にはただそれだけではなくて。
僕の胸はドッキンドッキンと騒ぎまくっている。
教室に入ってきた大野くんが、自分の席に向かう。
「持ち帰るの忘れちゃってさ~」
机の中に手を入れ、取り出したリコーダーを僕に向かって掲げた。
ふにゃっと微笑む大野くんにまたドキッとして。
「そ、そうなんだ」
僕は持っているリコーダーを両手で握りしめた。
「櫻井くんは何してたの?帰らないの?」
そう言いながら、大野くんが僕のほうに向かってくる。
うわっ、どうしよう。
大野くんだ~っ。
僕は心の中で、そう叫んだ。
リコーダーをぎゅっと握っている僕の手は、汗でちょっと湿ってきていた。