第17章 幸せな時間
(Sサイド)
「しょーくん。幸せにいいも悪いもないよ。」
智くんがそう言った。
俺の心の声が、漏れていたようだ。
「そうだね、智くん。」
そうか、幸せはどれだけ感じてもいいんだね。
まるで大人のような、でも智くんらしいその言葉が俺の中でしっくりきたのを感じた。
「あ~っ。お腹いっぱいになったね。」
「そうだな。」
そろそろ昼休みが終わる。
俺たちは教室に戻る準備をした。
クイックイッ。
智くんが俺のシャツの袖をつまんで引っ張る。
これは合図なんだ。
キスしたい、って。
普段はふにゃふにゃしている智くんだけど、これに関しては俺より積極的になる。
俺たちは中庭の出入り口脇の死角で、ちゅっ。と触れるだけのキスをした。
ちょうど1ヶ月前からの…誰も知らない
俺と智くんだけの秘密。
「さっ、戻ろうか。」
「うん…しょーくん。」
「ん?」
「おいらには、しょーくんだけだから。」
「うん。俺も智くんだけだよ。」
「しょーくん、好き。」
「好きだよ、智くん。」
ふふって笑いあう。
「帰り、迎えに行くからな。」
「うん、待ってる。」
さあ、午後の授業も頑張ろう。
END