第94章 愛と勇気とサクランボ
Oサイド
夏休みが明けてから、怒濤の学校行事2連続も慌ただしく終わった。
体育祭に文化祭。
もちろん俺たち教師も各々担当の持ち場があってバタバタしてたけど、もっと大変だったのは生徒たちだったと思う。
よく頑張ったなって誉めてやりたい。
その中でも、特に労ってやりたいのは…。
「まだいるかな」
そんな風に思いながら、目的の場所に辿り着いた。
ドアのガラス窓から中を覗くと、ホワイトボードを眺めている彼の姿が見えた。
白い肌に大きな瞳、赤くぽってりした唇。
「どんだけ綺麗なんだよ…」
その容姿に見とれながら呟いていると、彼の視線がこっちを向いた。
トクン…
俺の胸がときめく。
言葉や態度だったら何とかなるけど…胸の鼓動、これだけはセーブなんてできっこないんだ。
「お疲れ様、櫻井くん」
生徒会室のドアを開き、彼に声をかけた。
“櫻井くん”って呼び方に、彼が一瞬だけ眉をひそめたことに気づく。
「お疲れ様です。大野先生」
だけど彼は…櫻井はすぐ笑顔になってくれた。
お前と同級生だったら良かったのに。
そう、何度思ったことだろう。