第16章 眠りのキミ
大学卒業後、就職して1年が経とうとしている。
朝の通勤ラッシュにもやっと慣れてきた。
毎日同じ時間の同じ車両。
あ、いたいた。
俺がつり革を掴んでいる所から少し離れた席で、毎日熟睡…爆睡しているあの人。
スーツなのになぜかいつもキャップを深めに被っているから、顔は見たことがない。
スーツにキャップ…どんな人なんだろうと気になりだしてから半年。
今日こそは素顔が見れるかもしれない…と期待しながら電車に乗り込むのが日課になっている。
俺が降りる駅は多くの人が降りる。
自然と人の流れにあうから、あの人がどの駅で降りるのかは見たことがない。
ちゃんと起きれてるのかな…。