第90章 My Angel
僕は体を伸ばし、櫻井さんの顔に自分の顔を近づけた。
触れるだけのキスをすると、櫻井さんが微笑みながら僕の髪を撫でていく。
「…ここで過ごすの、最後になるのかなって思って」
「えっ、どうして?」
「櫻井さんが僕と同じ気持ちかどうか不安だったから…」
「えっと…あれ?大野が告白したのを謝ろうとした時さ。俺…無かったことにしないでって…」
「言ってました、けど?」
「あれは、俺も大野と同じ気持ちだってこと伝えたつもりだったんだけど…」
ん…?
そうだったんですか?
冷静になってよく考えてみればわかるけど…。
「あの時はわからなかったです。好きって言ってくれれば…」
自然と頬がぷうっと膨らむ。
「そうだよね。俺も好きだよって、ちゃんと言えば良かったんだよね。突然の告白でさ、びっくりして。だけど…」
櫻井さんが僕のおでこに口づける。
「不安にさせたり泣かせたりしてごめん」
あぁ、もう。
目の端っこがじわっとしてきた。
「鍵、返さないといけないのかな…とか、最後の食事になるのかな…とか」
「えっ、そんなことまで?」
ちょっと焦ってる櫻井さんは、やっぱり可愛い。
「それに…風呂上がりは上半身裸でウロウロするから、触れたいのを毎日グッと我慢してました」
「あっ…。時々よそよそしかったのは、そのせい?」
「はい、そうです。だけど…もう我慢しませんから」
「うん、我慢しなくていいよ。俺も、大野に触れたいし、触れてほしいな」
「櫻井さん…んっ…」
今してるキスは、とっても甘くてとろけてしまいそうだ。