第88章 果てない空
「僕は当たり障りなく生きてきたけど、大野さんっていう大切な人ができたから…パワーがみなぎってきました」
「パ、パワー…?」
「はい。大野…いや、智くん」
「…へっ?」
名字ではなく急に名前呼びされてビックリしてしまった。
「僕は、智くんが欲しい」
「ほ、ほ…?」
頭がパニックになっている俺をよそに、櫻井くんは手を繋いでベッドまでズンズンと向かっていく。
櫻井くんって…意外と男気があるというか行動力があるんだな。
そんなところも嫌いじゃないけど、なんて思っているとベッドに押し倒されてしまった。
「あ、あの…櫻井くん?」
「翔。翔って呼んで」
俺に覆い被さり、見下ろすその表情と低音ハスキーボイスが素敵すぎてドギマギする。
「しょ、翔、翔くん…これは一体…?」
「んっ?」
今度は、翔くんがキョトンとした。
「えっと…あの、ね。俺が下、なんだなって」
そう言うと、櫻井くんの表情がぱぁっと輝いた。
「智くんが気になってたのはそこ…?」
「うん。んっ?」
白いシャツにジーンズ姿の翔くんが俺に跨がったまま、バサッとシャツを脱ぎ捨てた。
厚い胸板と適度に割れた腹筋、筋肉が付いて逞しい上腕二頭筋。
その体つきに惚れ惚れしてしまう。
正直なところ…抱かれたいって思った。
「智くん、口がポカーンってあいてるよ。可愛い」
翔くんがクスッとしながら、俺の前髪をかきあげる。
なんだ、これ…。
同じ男性なんだけど相手が翔くんだから…もっと触ってほしいと思ってしまった。
ちゅっ。
俺の額と唇にキスが落とされる。
「もっと…」
自然と口にしていた。
俺に覆い被さった翔くんに首筋から胸を愛撫されると、全身に痺れるような快感が走り、気持ちも体も満たされていった。