第85章 のぼせ注意報

「んふふ。俺の櫻井」

「な、何言って…」

「えっ？違うの？」

「ち、ち、違くないけど…」

「けど？」

「は、恥ずかしいから…」

「あ〜っ。本当に可愛いなぁ、もう」

「う〜っ」

櫻井が背中を向けてしまった。

照れ隠しなんだろうけど…

「ねぇ、こっち向いて」

…何も反応がない。

「ん？どうした？」

「う、動けない…腰、痛い」

「無理させちゃったかな」

「ううん…お風呂に連れて行ってくれる？」

顔を俺に向けようとしながら櫻井がそう言った。

「いいよ、行こうか」



櫻井をお姫様抱っこして浴室に向かい、追い焚きしている間に自分と櫻井の体を洗った。

二人で湯船に浸かると、櫻井の体が俺に凭れてきて俺の手をお腹の辺りでニギニギしている。

「体、大丈夫？」

「うん…浴室まで連れてきてくれてありがとう」

そう言って、櫻井が俺の顔を見た。

上目遣いになってるの、可愛すぎるってば。

俺の中心が反応しちゃうって。

「俺の…大野くん…」

「えっ？」

「さっき、言ってあげられなかったから…」

「も、も、もう１回言って」

「俺の大野くん」

そんな、とびっきりのキラキラした上目遣いで言われたらもう…

「クラクラしてきた」

「えっ、大野くん大丈夫？」

「櫻井が可愛すぎるから」



お風呂から出ると、用意していた色違いのパジャマを着た。

櫻井はかなり照れてたけど。

「やっぱりワインレッドは櫻井のほうが似合うな」

「大野くんもブルーが似合ってるよ」

「んふふ」

ベッドの中で、ホカホカあったかな櫻井をギュウッと抱きしめた。

俺と同じシャンプーの匂いがする。

俺と色違いのパジャマを着ている。

まさかこんな日がくるなんてなぁ。

“大野くん…もう１回しよ？”

なんて言われたらどうしよう〜っ。

「大野くん…」

「は、はい」

「モジモジしてるけど、大丈夫？」

「あぁ、大丈夫だから」

心配そうに俺を見る櫻井の表情が、これまたキュートで。

ダメだ、ダメだ。

のぼせて見境がなくならないように気をつけないと。

そう思った。





END